生活ががらりと変わる春。大学生が新しい学び舎で戸惑うことが少なくなるように、初年次のクラスでは、いくつか、他の授業とは異なる視点で留意していることがあります。今日はそれをご紹介します。
1. 大学内の設備や学習資源の活用方法を織り交ぜる
ガイダンスで設備の説明は受けていると思うのですが、授業が始まって具体的に聞くことができるのは、また違った意味を持つと思います。課題デザインの中に、学内の資源を活用しないとやりにくいようなものを入れ込むことや、学内ツアーも行います。
2.処理時間に対する自覚を促す
同じ資料を渡して何分で読み終わるか、文章作成課題をどのくらいで仕上げられるか、といった、作業時間を計測してもらい、教えてもらっています。優劣をつけるためではなく、どのくらいの作業にどのくらい時間が必要か、を本人も教員も把握する目的があります。少し読むのに時間かかる人は、ぎりぎりから予習を始めても終わらないでしょう。書くのが遅い人は、レポート提出が重なる時期のアルバイトシフトは考えた方が良さそうです。
3.教科書の音読を勧める
初年次では教科書を使っています。なんでもいいのですが、1冊、半期で本を使い倒すということが大事かなと思っているので、値段の高くないものを選んでいます。初見の文章、頭に入れるには余裕がある人は音読すると良いと勧めています。文章を書き慣れていない人にも、どこに読点を打つか、どの程度の長さで1文をまとめるか、などを学ぶ機会になります。文章訓練だけ別途やるのもいいのですが、宿題で教科書を読んでくるように指示しているわけですから、それを文章訓練にも活かすと良いですよと話しています。
4.知り合いをつくるきっかけをつくる
どうしてもやる気がでない時、欠席してしまった時。教員に相談してもらっても勿論いいのですが、知り合いが各授業に居ると心強いですよと話しています。高校までと違い、授業ごとに受講メンバーが違う中、ぽつんと座っているよりも、仲間を作って学ぶ方が効率的な場合もあります。私は、グループワークやペアワークを導入することで、話しかけやすいシーンを作っています。特に、1年のクラスでは、自己紹介の活動をプレゼンテーションの最も初歩の課題と捉え、ナラティブに自己を紹介するワーク、他人の情報を聴き取るワーク、他者をさらに他社に紹介する他己紹介ワーク、というのをやっています。
5.グループワークをやりすぎない
高校までは座学中心だったのに、大学に入って「アクティブラーニング」という言葉に悶々としてしまう話をよく耳にします。本来、学習者にアクティブになってもらえればいいので、初年次教育では、大学教育へにおける様々な形式に慣れてもらう意図をこめ、グループでの作業やペアでの作業は原則、90分の授業時間のうちの一部に抑えています(初年次ではないクラスでは必ずしもそうではありません)。
6.今やっている学習活動と何が関連しているかを説明する
人間は、意味のある活動だと思えた方が学習がしやすいようです。意味というのは難しくて、その時点で「ああ、本当に役に立っている」と思えることばかりではありません。そう思えないとき、ちょくちょくくじけてしまいがちです。そこで、今やっている活動と他の学習活動との位置関係を、意識して説明しながら進めるようにしています。
例えば、「今日やったこのペアワークは、前回の何と関連しているのか」ですとか、「これから出すレポート課題は、大学を出た後に行う何の活動と対応しているのか」ですとか、「今日学んだ方法は、カリキュラム終盤の最終課題のためのトレーニングになっている」といった話です。意味づけを自分で見つけられる人には余計なお世話かなとも思うのですが。
一般的な授業でのことはこちらに書きました。