生涯の学習課題

「成人と学習」という半期の講義を昨年から担当し始めました。

社会教育主事という資格を取得したい人が取らねばならない科目として教育学部に設置されているのですが、実際には昨年も今年も、受講者には資格取得を目指している学生が多いわけではありません。設定されているのが5限ということもあり、ゼミナールのような雰囲気でやっています。

 

資格取得でもなければ、生涯学習専門の学生でもないわけで、生涯学習における理論変遷も扱いますが、できるだけ大学を出た後につながる内容にしたいと考えています。今年は、彼・彼女らの考えるこれからの「人生」「生涯」と、そこで予想される学習課題を1人1人考えてみて、その学習課題についてどのような学習方略がありそうか調べたり考えたりして1人ずつ発表するという中間課題を設定しました。

まず、大学生に、今後迎えるであろう社会についてリンダ・グラットン『ライフ・シフト』を紹介し、自分が生きてみたい人生100年の年表を考えてもらいました。

次の段階で、そういう人生を送ろうとした時、人生のそれぞれのフェーズでどのような学習課題が発生しそうかを検討しました。

彼らが考えた人生における学習課題の中で、1人1つ、自身が探求したい課題を選んでもらいました。それは下記のようなものでした。

子育て(思春期の異性のこどもとの付き合いや非行)

死とのつきあい方

世代差と関わり方

健康・食べること・出産

年齢ごとの家庭内円滑化

労働と職場

お金

多様な経験を可能にする

音楽演奏を生涯続けるために 

 

次に、学習課題はこのままでは大きいので、できるだけ具体的なタスクイメージを表現してみました。今後は、それらを実現できそうな学習方略を調べたり考えたりして、1人1人、自身の担当回に発表していく予定です。

 

こういうカリキュラムにした背景にあるのは、自己調整学習という考え方です。

高等教育の目標は生涯学習者(lifelong learner)を育てることであるとニルソン氏は言っています。

学生を自己調整学習者に育てる:アクティブラー二ングのその先へ

学生を自己調整学習者に育てる:アクティブラー二ングのその先へ

  • 作者: L.B.ニルソン,Linda B. Nilson,美馬のゆり,伊藤崇達,深谷達史,岡田涼,梅本貴豊,渡辺雄貴,市川尚,畑野快
  • 出版社/メーカー: 北大路書房
  • 発売日: 2017/07/14
  • メディア: 単行本
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自分で学習課題を発見し、自分の現状にあった学習方略を選択し遂行できる自己調整学習者を育てるために、何ができそうか。それが、私の最近の関心事の一つです。

 

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