研修であまり聞かない「大学のカリキュラムや授業デザイン」のティップス8つ

FD部署に2年半配属され、その間に他大の研修も見てきました。今日は、FD研修では扱わないけれど私が意識している「デザインのコツ」をまとめてみました。ワークショップデザインの知恵がふんだんに反映されています。

 

1. 年間行事予定を意識してカリキュラムを作る

シラバスを書く前に年間行事予定をチェック。カリキュラムデザインする際、連休や文化祭、冬休みといった、期間中に重なる予定を先に押さえる。休みの前後は出席率が下がる可能性があるので、そういうところに小テストを挟んだり、ゲストを招いたりして引き締める。長めの休みには課題を出すというのもあり。

 

2. ガイダンスは授業の進め方と成績の付け方への合意形成

第1回はまだ履修していない学生が来るので、本題に入るよりは、ガイダンスとして実施する。授業全体の形式や目指すところ、成績の付け方、教員として学生に期待すること、その他ルールの確認、学生からの運営に対する質疑、といった内容におさえる。

 

3. 学生の履修動機とレディネスをチェックする

相手を知らなければ教育方法を考えるのも難しい。履修動機と内容や形式に対する準備状況を把握できるタスクを第2回目で行う。ゲームのような形式にしてしまってもいいし、クイズにしてもいい。ここで学生の様子を把握し、注意が必要な学生のチェック、その期のカリキュラムの最終的な落とし所を決める。

 

4. お天気を意識する

当日にならないとわからないけれど、前日あたりから天気予報を見ておけばある程度の想定ができる。荒天は学生が来ていても、通学時に疲れている可能性も高くテンションが低い。そこから盛り上がるためには、導入部の課題を緩やかなものにする。また、遅刻者も多くなりがちなので、支障が出にくいものにする。その他、部屋の温度や風通しも、学生が快適かに関わるので留意し、上着を着出した、ぼーっとしている、等の様子をチェックする。

 

5.  1コマの中にメリハリ

講義のみ90分というのは現実的ではない。スライドを見せるとしたら10分〜15分が連続の限界だろう。もし45分見せたいなら3部構成にし、それぞれのパートで理解できているかをチェックできるワークを挟む。スライドを見せている間、メモをとるタスクを課しておき、そのメモを隣と交換して読むといったことをするのも、集中力を持続しやすくする。数回分の授業をひとまとまりと考えるなら、前半に扱う内容と後半に扱う内容、全く異なる内容にしてそれぞれが数回分終わった時点で完結します、というスタイルも、復習が兼ねられてよい。

 

6. カリキュラムの中で足場を外していく

カリキュラムの中にもメリハリが必要である。カリキュラムの初盤(1〜5回)までは教員が用意したタスクをこなしてもらうが、様子を見ながらだんだん、学生が主体的に行っていかねばならない内容に切り替えていく。この時、難易度は徐々に上がるようにすること、前回や前々回の内容を使いながら行えるよう、チェーンになっているか気をつけること。

 

7.課題の真正性

大学の授業の中でだけ議論されることとして認識されないための工夫。授業の課題がこの後社会に出てどのようなことと重なってくるのか、どのようなことに役立つ力量形成がなされるのか、現実における意味を説明しながら進め、最終的には学生に何をやるかを(ある程度の選択肢を用意したとしてもその範囲の中で)決めさせる。

 

8. 成績評価方法を複合的にする

成績評価を総括的評価だけにし、テストだけ、あるいはレポートだけといった単一のアイテムで測ることは、ドロップする学生を増やすリスクを抱える。複合的にすることで、学習者特性の差異に配慮することができる。さらに評価時期をカリキュラム中盤にも持ってくれば、形成的評価として機能させることもできる。例えば中盤に小テストをすれば、良くないスコアの学生に以降ケアをしたり追加課題を出したりすることができる。

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