査読について思うこと

こんな記事を読んだ。

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学者になってどうするの…(そんなに良いかこの仕事)と思ってしまうのと同時に、男女で目指したい夢が違うんだなとも思う。

私は研究者をやっていて楽しい、でも他人には全く勧めない。なぜなら、大変だと思うから。研究者が大学教員をする場合は、研究以外の力量も必要になるので、研究オンリーで行けるポジションかどうかみたいなのもあるけれど。こどもの時に、そういう話をしてくれる人が身近にいるかっていうのもあるけど、まあ、なかなか難しそう。

 

さて、一般の人には理解されにくい仕組みがいくつか研究者にはあると思う。

その一つが「査読」ではないかと思う。

 

査読とは、

学術誌に投稿された学術論文を専門家が読み、その内容を査定すること。(デジタル大辞泉

 

研究者になっていく過程で、私たちは、査読を受ける。そして、だんだんキャリアを積むと、査読をする側にもなる。査読は、ブラインドで行うことが多い(少なくとも私が知る限り)ので、あまり詳細は言えない。知らない誰かのを、知らない誰かが読む、という体になっている。

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学生の頃だと、誰かに指導をうけているので当然、師や自分の所属コミュニティの中では論文を読んでもらっている。納得し、ここまででどうだ!と思って「投稿」する。しばらく待っていると(この期間は投稿先による)、返事が返ってくる。それを見て、コメントに従って、忠実に修正をし、回答書を作成し、改稿原稿とともに「再投稿」するというのが流れである。

 

ここで、重要なのは、査読者は論文が世に出ていく前のゲートキーパーであり、かつ、自分にとっての初めての読者なのだということ。査読は「批判ではない」ので、査読者はその論文のアラを探しているのではない。その論文を読み、その論文をもっとよくするための手立てを考えてくれる、いわば、会ったことの無いメンター、あるいはパートナーなのだと私は理解している。

 

だから、回答書の書き出しは当然「丁寧に読んでいただきありがとうございます」というようなフレーズになるのだ。

勿論、返ってきた時は、(こんなに考えたのになんでわかってくれないんだよ…)とか、(そこ突っ込まないでよ…)とか思う気持ちもあるかもしれない。でも、私は、初めて投稿したとき修士論文を改稿したものだった)、いただいたコメントの通りに書き直したら本当に読みやすいものができたので、目からウロコで感動したを覚えている。1人のために他の人も貢献する、良いものを一緒に創って出していく。それが「学術」という協働作業なのだと思う。

 

私も何度か査読に落ちたことがあるし、しんどい改稿も経験したけれど、査読を経て論文は強くわかりやすくなっていくことを実感するので、自分からは「査読付き」しか出したくないと思ってしまう。

この前、依頼原稿というのを書いたが、査読がないことが本当に辛くて泣きそうだった。査読の無い学内紀要を今年は単著1本、共著1本書かなければならないことが既に決まっている(研究費をもらってしまったため)ので、今から暗澹たる気持ちである。

 

普段から査読のリハとして意識しておくべきことは、試読してくれる人を見つけておくことかもしれない。お互い忙しい研究者であるが、あなたのも読むから私のも読んでおくれ…と言える相手を、いろいろなキャラ(ロジックにシビア、内容に知がある、先行研究に詳しい、文章技術が高い、語学ができる等)、あてを作っておくと良いと思う。これは同じクラスの人では十分ではない。自分とタメか、常に自分より秀でたところのある人でないとよくない。

研究者コミュニティでは、自分より上のクラスの人とつきあっているか(つきあってもらえるか)というのが、生命線だと思う。そういう意味で、上のクラスの人が自分を「おっ、この研究者、面白いんじゃない?」と思ってくれるという相思相愛関係であるかというのも大事だ。

 

多作であるか寡作であるかも、就職活動の段階では効いてしまう業界ではある。でも、研究者キャリアを楽しく、長く続けていくためには、それだけではなくやっぱり仲間探しが必要だ。そういう意味で、書くことは続けなければならないし、存在感を出していかなければならない。そういう意味でも、研究会とかは顔を出した方がいいと思っている。(学会は…正直わからない。お金がかかりすぎるし、大きすぎると感じることもある。仲間探しより、情報キャッチな気もする)。

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harinezumi.hatenablog.com

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書き終えてからなんとなくこれを思い出した。これは研究者コミュニティの話ではないけれど。

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