質的調査と調査計画

質的調査法を教える授業を始めて7年目になるようだ。

2011年〜2014年は、半期のみの非常勤として某私大で担当していた。当時新設科目だったため、一からカリキュラムを考えることになった。これは私にとって始めての「非常勤講師」経験だったので、1年目は手探り、2年目も少し憂鬱だったように思う。もっとも授業自体をすることは自分にとって学びが多く面白かったし、その時にできることで最善は尽くしているのだが。それでも、学生というのは経験何年目の教員にあたるかわからないわけで、なんとも申し訳ない、難しい。専任で現在の勤務校に移動が決まったのが2014年秋なので、そのタイミングで非常勤は丁重に辞退させていただいた。

 

現在の勤務校では、最初は他業務との兼ね合いで3コマ/半期(現在の半分である)の授業を担当するようにと言われ、その科目は好きに選んで良いということだったので、半期の「人間学基礎セミナーⅠ」と「人間学基礎セミナーⅠ」で「質的調査法」を教えている。この3年半でカリキュラムがとても安定してきており、自分にとっても「心地よく」なってきた。

 

 

研究に縦軸と横軸があるとしたら、「調査法」は研究の横軸になるのだろうか(縦にするか迷ったけれど、縦の方が、どちらかというとテーマや理論なのかなと思った)

 現在の質的調査法の授業では、「最終的な発表スライド・レポートはこの書式にそろえてください」とわりと最初の方の授業で(2回目あたり)話す。そして、サンプルを見せながら、毎回、繰り返しこの話をしていくことになる。

タイトル

所属・氏名

 

背景(なぜそれを明らかにするのか)

目的(何を明らかにするのか)

方法(どのようにして明らかにしたのか)

結果(何が明らかになったのか)

考察・今後の展望(何がそこから考えられたのか・何が明らかにならなかったのか)

質的調査法で扱えるものであれば、扱うテーマはその人の興味が数ヶ月持続できるものならできるだけ受け容れる。(しばしばわからないテーマもある。そういうときは、まずは本人からいろいろ聴き取りをし、その上で、一緒に文献やネットを調べながら私も勉強する。)どんな卑近なテーマを扱っていても、形式を守ってもらえると読みやすく、そして「それなりのきちんと」になるからだ。

 

インタビューや観察のワークをいくつかやっていき、調査できる対象のバリエーションや、仕上がりのイメージになるような論文・スライドを見せて説明していった後、いよいよ、最終課題(いや、本題)の「調査」に入る。

 

調査を始める前に、必ず、調査計画書を書いてもらう。

調査計画書というのは

タイトル

所属・氏名

 

背景(なぜそれを明らかにするのか)

目的(何を明らかにするのか)

方法(どのようにして明らかにするのか)

予想される結果(何が明らかになりそうか)

今後、調査を進める上での課題

この順に書いてもらう。

この形式になるまで、この形式が順当な分量で書けるまで(私はA41枚両面まで、とイメージしている)何度でも書き直してもらっている。単にこれだけのことなのだけれど、なかなか仕上がるまでに時間がかかる。OKが出るまでは調査に取り掛かってはいけないことにしている。

この形式で書いていくメリットは、何処がまだ考え足りていないのかが書いた分量で明確になることだと思う。練れていないことは当然、書けない。書かれていないことは、私にはあるのかわからない。つまり、他者にとっては「無い」と思われてしまっても仕方ない。

 

学部生はこれから調査研究者になるわけではないのだけれど、だからといって、教える手順が変わるわけではないよなあとよく思う。

 

f:id:hari_nezumi:20180111200122j:plain