博論の時に行ってきたことは、ワークショップ実践者がこれまで歩んできた道のりとその実践知が何であるのかを考えていく営みだったと思う。人を育てるために、という大義を当時掲げていたが、実際に関心があった、自分を研究に駆り立てていたのは「実践知を明らかにしたい」ということだった。
何度かここでも書いたかもしれない、人にも話しているが、私がエイジングに関心を持ったのは、ワークショップ実践者の人となりと生き様、ライフヒストリーに触れたことがきっかけだった。私が博論を書き終えるまでの間に、データ取得させていただいた方は皆さん、年を重ねていった。勿論、私もだ。つまり、研究を続けていく中で、そう、年賀状を出したり、論文が出たことを報告したり、イベントをやるとお報せしたり、本をお届けしたり。そういう中で、私は、「年をとること」に興味を持った。
周りの人が、全ての浮き沈みを私に話してくれるわけではないことも知っている。自分もまたそうである。それでも、年をとるということが、本当に楽しみでしかないというこの気持ちを、どのように表現していいかわからなかった。
誰ひとり、自分がなれそうだと思う背中があるわけではなくても、それでも、自分の将来がひたすら明るいとしか思えない。そういう、絶対的なポジティブさが自分の中にある。
今日も、総務省IoT新時代の未来づくり検討委員会人づくりWG高齢者SWGに参加してきた。毎週朝が早いというのは辛いはずなのに、この会議に出るのは面白いので苦にならない。先週から、翌週になるのが楽しみであった(これで私は参加してお金をもらっているので、本当に不思議な話なのだ)。
この会議について、総務省HPによれば以下のような記述がある。
- 概要
2020年以降の日本社会において人口減少・高齢化が一段と本格化する中、これに伴い経済や産業・地域などあらゆる面で困難な課題が生じることを受け止めた上で、こうした課題を乗り越えていくために日本の歩むべき道を見定めることが必要となっています。
そこで、2030年~2040年頃の未来社会を展望しつつ、IoT・AI・ロボット等のイノベーションの社会実装や、年齢・障害の程度等を超えて誰もがその能力を発揮し豊かな生活を享受できる社会の実現に向けて取り組むべき情報通信政策の在り方を検討するため、情報通信政策部会の下に「IoT新時代の未来づくり検討委員会」を新たに設置するものです。
■主な検討項目
(1)IoT・AI・ロボット等のイノベーションの進展に伴う2030年~2040年頃の未来社会のビジョン
(2)IoT・AI・ロボット等のイノベーションによる持続可能な経済社会の実現方策
(3)IoT・AI・ロボット等が「当たり前」の時代に求められるICTスキルの習得や、年齢・障害の程度等を問わず国民各層がICTを利活用できるリテラシーの在り方の検討及びその実現に向けた支援方策
本日は4名の方から実践事例を伺った。以下は考えたこと。
【1】実践知の整理
やはり、実践事例を聞くのは面白いのだが、比較して整理したくなってしまう。それは研究者の性なのか、何なのか。あと、プレゼンテーションには良いことが沢山表明されていることが多い。うまくいかなかったこと、その時の条件が知りたい。
これは意識的にやらないと、沢山事例収集してもだめなのではないか。
【2】実践情報の伝播
素晴らしい全国各地の実践事例は、どのように一般の方々に届くのか。そのインフラの整備が必要である。まさに、それこそ、情報デバイドそのものだ。PC教室、スマホ教室。それがほぼ無料でも受講できることを知っている高齢者はどのくらいいるのだろうか。
【3】PCなのかスマホなのかを越えて
インターネットの本質的にすごいところは、自己調整学習あるいは自己決定学習を可能にしやすいところだと思う。ICT本来の面白さは、まだ触ったことのない高齢者に、どのように伝えることが可能だろうか?インターネットは思考を変え、行動を変える、つまり、大きな思想的転換なのだ。だからこそ、私は、自分の実践現場に行って高齢の方に感じることと、PCをあまり使わない大学生に感じること、案外これが似ている。処方にも共通することがあるように感じる。スマホはインターネットを身近に感じるツールであったかもしれないが、PCを触らない人(高齢者であっても大学生であっても)からすれば、それもまた単なるブラックボックスにすぎないのではないか。
【4】ICTアクティブシニア予備軍へのリーチ
これは博物館教育でよく言われる「潜在的来館者層」に似ているのだが、成人学習に関しては、関心あるけど一歩踏み出せない層、にどうリーチするかが鍵だと思っている。そこも実は多層なので、クラスタリングしてそれぞれの学習課題を整理していく必要があると思う。
とりあえず、備忘録として。