粥の味

うちには8歳の小さな人が棲んでいる。私は彼のことを、便宜上、8歳児と呼んでいる。

8歳児は毎日大変愚かなことを言う。それに対し、私は時に腹立たしく、時に腹を抱えて笑う。

 

さて。そんな彼が月曜日、胃腸を壊した。そんな彼に、私は粥をつくった。

月曜日、弱った8歳児は粥をあまり食べなかった。

火曜日、8歳児は粥を食べてこう言った。

 「お母さんがつくったお粥ってどうしてこんなに美味しいんだろう。お粥ってつくるの大変?」

 「いや、時間はかかるけど別に大変じゃない。」

 「僕、毎日これで良い。こんなに美味しいんだもの、毎日お粥が良い。」

アホである。なんともアホなのである。だいたい、そんな言葉は撤回される。そう思いながら聞いていた。

 

水曜日、8歳児はこう言った。

 「ピザ!ピザが食べたい。ピザが食べたい気分なんだ。」

 「君、昨日は毎日粥で良いって言わなかった?」

詰め寄って、からかって、さんざんへこませた後、8歳児とピザを食べた。

 

先のことなんて言っちゃ駄目なのだ。粥が美味しかったのは、君が弱っていたからだ。

昨日の君には粥だったのだ。

今日の君にはピザなのだ。

 

そういえば。風邪の日に母がつくる卵粥は、素晴らしく美味しかったな。