デザイナーと研究者

先日、個人的な報告のため、葉書デザインをデザイナーに依頼してみました。

デザイナーの方から、仕上がったものが自宅に届きました。

 

その折、届きました旨、そっけないメール返事をしたところ、すぐに見抜かれて「仕上がりはいかがでしたか?」と返されました。


これはまずいと思って、実はしっくりこないところがあったことを徐々に打ち明けますと、ネガティブなことを思っていても言わなければならないというメールをもらいました。
 
私は、葉書の角が郵送される際に変な風に丸まっていくことを気にしていたのですが、デザイナーはそれに対応するため、角丸カッターというので角を切ってみると面白かったですという情報をくれました。私の気になるところを先回りされていました。
 
私はできたもののかたちより、届いたときのかたちが気になります。そして、届いたあとの葉書を見ることはできないので、とても一生懸命、その葉書が配達されていく様を思い浮かべます。そういうところを、長く付き合っているデザイナーは見ていてくれているんだという気がしました。

"デザイナーにとって、大切なお客さんとは、優しいだけではないものです。” とメールに書かれ、自分を何かに映してみたいという衝動に駆られる時のことを考えました。では、何に映したいか?
 
こうやって信頼関係は築かれていくのかもしれないと思いました。

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私は、「デザインとは何か」を語れる立場には全くないのですが、インタビューなどを使った調査研究を行うことが多いので、デザイナーとの「対話」の中で考えさせられることは多いです。

大学の研究者は、外からの視点に触れて思考を外化しなければならないことが案外少ない職業だと感じます。アカデミアの中では、共通概念が多く存在し、そこが暗黙のルールになっていて言語化されないことが多いです。それはしばしば、領域の閉じを生みます。

今後、大学で多くの学際的な取り組みが行われるためには、思考の外化を支援してくれるデザイナーの存在が重要だと思っています。
 
デザイナーはそれを特に役割として意識しているわけではないのでしょうが、言語のみではないものに落としこんでいく作業をするために、しばしば、重要なことをクライアントに問いかけると思います。
 
この問いかけるという行為は、未知なものと闘う孤独な研究者にとって、時に素晴らしいパートナーとなりうるのだと思っています。