「解散」した日

選挙があると父は居ない。

 

こどものころから、選挙がいつあるか気になっていた。

国会便覧を持ち歩く小学生だった。

それははじめ、親の行動を識るためだった。

父がいつ居ないか、父が暇そうか。

ああ、また地方で知事選あるから父親参観来ないなあとか、

そんなことを思っていた。新聞の政治欄の切り抜きもしていた。

 

いつしか「選挙」とは、

私にとって、近いようで遠いものになっているのだ。

 

ーー

解散と総理が言った日、

その朝、私は珍しく父に電話をかけていた。

 

まあ電話ってのもあれだからと言われたので、その後会うことになった。

久方ぶりだった。

 

会ってすぐ私は言った。

「選挙、いつかね?」

 

「大統領選か?」

「いや韓国の話じゃないよ。日本の話。」

 

「ああ、来るな。」

「今日言っていつよ?16とかあり?でも23やばいでしょ。」

 

それから1時間、2人で居たけれど、会話は成立しないまま。

そわそわして過ごした。

 

「解散だ!」

父が携帯見て言った。

「野田言った、ああそう。輿石かんかん、あっそう(笑)」

父が新聞社の人と笑ってた。

それからあちこちに電話し始めた。

 

「これから忙しくなるね。そろそろ行くよ私。」

「ああ、飯食う暇がないよ。」

 

そんな会話をして父と別れた。

進路の話なんてする余裕はなかった。

 

ーー

なんとなく、私は私がしたいことを決めようと思えたのでよかった。