【Book Review】質的研究Step by Step:すぐれた論文作成をめざして

質的研究Step by Step―すぐれた論文作成をめざして

 

波平恵美子・道信良子(2005):すぐれた論文作成をめざして. 医学書院

定価2500円

 

■本書の背景
質的研究というものを理解して自分の研究に生かそうと考え、この研究方法に基づいて実際に論文を書こうとする人々が増えていること。また、その使われる範囲が多くの分野に渡っていること。


■本書の特徴
(1)実際に論文を書こうとしている人に本当に役立つレベルの情報を整理し提供することを目的としている。
(2)質的研究の背後にある膨大な理論的蓄積については最小限に触れるにとどめることで「質的研究をやってみたいが難しそうだ」という印象を払拭することを目指している。
(3)研究の手順が、「研究テーマの設定」「プレ仮説と結論のシミュレーション」「データ処理の方法」「調査を開始するための具体的プロセス」という順序で具体的に示されている。
 

■本書に関する感想・メモ
 問題意識や関心と研究テーマとの違い、研究の方法と範囲の設定。研究を始めるとき戸惑うであろうことについて潔く明瞭な説明が書かれている。文章量が多くなくわかりやすい。ターゲットがイメージしやすくて良い本だと思う。A4で95ページと、コンパクトにまとまられている。倫理的配慮について丁寧に書かれている。発展的に学習したい人への様々な情報もある。データ分析ソフトについても触れられている。

 事例が医療関係なので、他の研究テーマを扱いたい人にはそこが読みにくさにつながるのかもしれない。また、研究以外で質的調査法を使う人は読者として想定されていない。第3章に、学生と教員とのやりとりについて触れているところがあり、読み手には大学で指導にあたっている人も想定されていることがわかる。