ブラックボックスへの対価

@infoguild :「世の中に認められているかの、一つの指標として、仕事相応の金銭が得られるかどうかが大切」と語ってくれた人がいる。その時、涙が出るほど嬉しかった。口先だけで、イイね、またお願い、は、いっぱいいっぱい聞き飽きていた。

 

神戸芸術工科大学ドキュメンテーションデザイン研究室の曽和さんがこんなことをつぶやいていた。胸が締め付けられる。そのあとに、「このままではすり減ってしまいそうで。」というツイートもあって、余計。私は曽和先生の仕事ぶりは、もう6年知っており、ダイナミックかつ繊細なその仕事には、大変な精神力が必要なこと理解している。

 

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仕事には対価が必要で、それがうまくいってないなら仕事として成立するシステムをつくらなきゃいけない。

新しい仕事で相応の金銭を得るためには、まず相手に「これは仕事である」ことを周囲にわかってもらう必要がある。

専門性というのは連続的なものなので、アマチュアからプロになるまでの間に確かに区切りはないというのは正論かもしれない。ただ、それではその役割は、仕事として成熟しない。最初は試しに取り組んでいた人も、徐々にそれに熟達し専門性を築いていく。どこかの段階でその人をプロとして周りが認め、労働の対価を検討しなければならない時期がくる。

 

しかし、新しい仕事をつくっていくとき、そこに難しい問題が存在する。どのくらいのコストがかかるのか、時間、金銭、精神的負担、など。そこに専門性があるからこそ、その専門性が発揮されるのにかかるコストは、専門性の無い人には明らかでないことが多い。

専門性とは、その専門性を持たない人にとってはブラックボックスなのだ。ブラックボックスへの対価を考える、という中で、できることは、そこをブラックボックスにしないための双方、あるいは周囲の努力だろう。

お願いする方は、遠慮なくなんでも言ってくださいと交渉の場で言う必要があるし、言ってもらえるような信頼関係を築かなければならない。

勿論、仕事をお願いする方にも予算というのがあり、「いいね!」と思ったもの全てに予算を割けないこともある。それも伝えられる範囲で伝えた方がいいだろう。だからこそ、気持ちよく仕事をするためには、先にお金や条件、待遇の確認をしなければならないし、そこで合意をとったことに対して、見直しの必要はないか、区切りのところで再度、相談をした方がいい。

このことはいつも難しいのでとても悩む。財布からは無限にお金は出て来ないけど、必要なときは予算をつくって、きちんと仕事への対価を払わなければならない。

新しい仕事をする人は、ブラックボックスにお金を払ってくださいではなく、ある程度その仕事にかかるコストを依頼主に伝えるといいかもしれない。それが理解されていなくて不当な条件になってしまうことも結構よくあることだからだ。

 

気持ちよく、緊張感を持って仕事をするために。

大前提として、ありがとう、と労うことを忘れないこと。どこに満足したかを伝えること。不満足な点があればそれも伝えること。その上で、条件の見直しも含め、コミュニケーションにちゃんと丁寧に時間をとること。(自戒をこめて)